元阪急の山下浩二投手を知ってますか? 1974年 遠投108㍍、例えばホームベース上から投げた球が軽く外野のフェンスを越してしまう距離である。
強肩がプロの第一条件とはいえ、これほど鉄砲肩を持った新人はそうザラにいるものではない。
熊本二高から阪急入りした山下浩二投手(18)、甲子園の経験がなく、その点では無名だが、このところ不作といわれてきた九州にスイ星のごとく現れた本格派の大器である。
181㌢、72㌔と均整のとれた体は全身バネといった感じ。
とくに手首の強さは抜群で、スナップを利かした快速球に上田監督は「純金」と一目ぼれ、「新人王をとらしてみせる」とまでいい切った。
怪物江川の慶大進学で、ライバル早大が江川に対等に投げ合える投手として選んだのが山下。
「四年間も苦杯をなめさせられてはたまらん」と、山下を必死に説得したが、ドラフト指名一位の江川にソデにされた阪急がプロのメンツをかけてやっと獲得したいわくつきの投手だ。
「江川は完成品だが山下はまだまだ伸びる。
そんな未知の魅力を持ちながらフォームもまとまっているし、手を加えるところがない。
課題といえば実戦でプロの野球を身につけることだけ」というのは梶本コーチ。
「江川君はテレビで見ましたがそんなにスピードがあるとは思いませんでした。
あの程度なら僕だって投げられる」試験勉強で昨年八月から球を握ってなかった山下、キャンプも六日から参加したが、ナインに追いつき追い越せとばかり張り切る山下に「張り切り過ぎて故障でもされたら・・・」と首脳陣は手綱を締めるのに手を焼くほど。
二外人の入団でレギュラー争いがさらに激しくなった阪急の投手陣だが、そんな中でいち早くオープン戦登板の切符を手にした山下、それだけでも素質のよさが知れる。
「米田さんを目標にがんばりたい」怪物江川を上回るスーパー怪物はプロ一年生とは思えぬ度胸のよさでエースへの道へスタートを切った。
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